篭城

旅行先で携帯電話を水に落とした。

自他ともに認めるスマホ依存の私には無事本体交換にたどり着くまでの二日はなかなか辛かったけど、その代わりに停滞していた小説を読んだりして気を紛らわせた。

(登場人物の関係性をすっかり忘れていて何度も前に戻りながら読んだのだけど)

別に友達からの連絡が頻繁に来る訳ではない。ガラケーを使っていた高校生の頃は家に携帯を置いて学校に行くことが何度かあったほど、連絡手段として使う機会は少ないのだ。

それでも手放せないのは、単純に居心地がいいからだと思う。

スマホって、(趣味で使う場合に限ってだけど)帝国みたいだなと思うことがある。

好きな音楽しか流れない、好きな人しか住んでいない、風景もよりどりみどりで飽きたらすぐに変えられる。

好ましくない人が入ってきても、排除する方法はいくらでもある。ブロックでもミュートでも、非表示のボタンを押せば一発で強制退国。

コンプレックスを隠したまま、自分の得意分野だけ発信することもできる。そこから仲良くなったら、自分の帝国に招き入れればいい。

大火事が定期的に起きたりと楽しいことばかりではないけど、それでも現実よりは居やすい気がして、つい帝国の中にひきこもって窓から外の世界にいる友人たちの様子を眺めてしまう。

友人とのSNSの繋がりって一方通行で脆いんだけど、だからこそみんな縋るのかななんて思ったり。

 人それぞれだからなんとも言えないけどね。